組合運営Q&A
 
II 事 業
11 定款記載事業を実施しない場合の処理について
定款に、
   第7条 本組合は第1条の目的を達成するため次の事業を行う。
  1. 組合員の取扱品の共同購買、共同保管及び共同運送
  2. 組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む)及び組合員のためにするその借入
  3. ○○金庫、△△公庫、××銀行、□□信用協同組合に対する組合員の債務の保証
   第41条 総会においては、法又はこの定款で定めるもののほか、次の事項を議決する。
  1. 借入金額の最高限度
  2. 1組合員に対する貸付け(手形の割引を含む)又は1組合員のためにする債務保証の残高の最高限度
と規定している協同組合が、
  1. 定款第7条第2号及び第3号の事業は当分の間実施しないこととして、総会に対し定款第42条第2号の議決の審議を求めず、総会に出席した組合員もこれに関する議決を要求しなかったために、総会がこれに関する一切の議決をせずに終了したときには、理事は職務過怠の責を負うべきか。
  2. 定款に記載してある事業を一定期間実施しないときは、必ず総会に図り定款の一部を改正して、その該当条項は削除しなければならないか。
  1. (1)ある事業年度において組合が行おうとする事業については、事業計画書及び収支予算書に記載され、総会の議決を経なければならないことになっている(中協法第51条第1項第3号)ので、この議決を経ていない事業は、定款に記載されていても、当該事業年度においては、実施しないことになる。したがって、設問の事業資金の借入及び貸付事業については、その組合が当該事業年度においてこれを実施しないため、事業計画書及び収支予算書に記載されていないのであれば、借入金額の最高限度、1組合員に対する貸付金額の最高限度等に関する議決を行わなかったとしても、理事の任務懈怠であるとして指摘する程の問題ではないと解する。
  2. (2)その事業の実施が、翌事業年度ないし近い将来において再開される見込がある場合には、特に定款を改正して、当該条項を削除する必要はない。

 
12 組合事業の利用強制について
本県内の某市の製氷業者において、組合員の製氷をすべて組合を通じて販売をする目的をもって事業協同組合を設立する動きがあるが、これら事業につき次の点を照会する。
  1. (1)組合規約で「組合員の製氷はすべて組合を通じて販売しなければならない」旨の直販禁止を行うことは、独禁法上からも差し支えないか。
  2. (2)上記の規約に罰則を付する場合とそうでない場合とでは、法的に効果は異なるか。
  3. (3)販売価格は、組合自体が定める価格であるので、「価格協定事業」に該当しないと考えるがどうか。
  1. (1)協同組合の事業の利用を組合員に強制することは、その行為の内容が独禁法第22条但書きに該当するもの、すなわち、「不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合」でない限り差し支えないと解する。したがって、ご質問のように組合規約に組合員の製品の直売禁止を規定することは、独禁法第22条の要件を充たしている限り差し支えない。
    なお、組合事業の利用を強制することは、組合員の自由を不当に拘束する危険があること、また、農協法第19条において組合が組合員と組合事業の一部の専属利用契約を締結する場合は、契約の締結は組合員の任意としていることから、農協法第19条を類推して組合は組合員が自由意思により専属利用契約を締結した場合のほか組合事業の利用強制はできないとする有力な説があるので、慎重に行う必要がある。例えば、組合規約により行う場合でも、組合員全員一致による議決を行う等の配慮が必要であろう。
  2. (2)組合事業の利用強制が適法と解される以上、当然罰則を付けることは、差し支えない(3)貴見のとおりである。

13 共同受注と一括下請負の禁止について
事業協同組合が建設工事等を共同受注しようとする場合、建設業法第22条「一括下請負の禁止」の規定が適用されているが、同条第3項の但書きの規定により発注者の承諾を得た場合に限り共同受注が同条本文の適用の除外となることとなっている。
しかし、同条の主旨は一括下請負により工事施工の責任が不明確となること、あるいは商業ブローカー的不良建設業者の出現等を排除するために規定されたものであることからすると、建設業関係の事業協同組合は建設業法の許可基準の要件を満たし、組合にしかるべき有資格者が設置されているとして建設業の許可を受けており、組合の管理、監督のもとで工事施工する場合、責任の所在は明らかである。また、協同組合の特殊性を考慮すればブローカーを排除するための規定には該当しないものと考えられる。
したがって、事業協同組合の共同受注は、建設業法第22条「一括下請負の禁止」の条項に該当しないものと思われるが、これに関してご見解をお示し頂きたい。
また、測量関係組合が共同受注する場合の測量法第56条の2「一括下請負の禁止」条項に関しても建設業法と同様に解釈してよろしいか。
  1. (1)建設工事について
    建設業における組合の共同受注については、建設省計画局建設業課(当時)と協議したところ、次のとおり解釈される。
    1. 建設業法第22条で一括下請負をいかなる方法をもってするかを問わず原則禁止している趣旨は、①発注者の保護、②中間搾取の排除(注)である。
      (注)
      1. ① 一括下請負は実際上の工事施工の責任の所在を不明確にし、ひいては工事の適正な施工を妨げるおそれがある。
      2. ② 中間搾取を容認すれば、工事の質の低下、商業ブローカー的不良建設業者の輩出等のおそれがある。
    2. 組合の場合、通常中間搾取のおそれはないとしても、受注した案件を単に組合員に配分するだけでは、発注者側として具体的にどのような者が工事を行い、技術的な管理を行うのか不明であるため、上記1.①の観点から一括下請負に該当するといわざるを得ない。
    3. しかしながら、組合はもともと建設業法に基づき、しかるべき資格を有する技術者がいること等について審査のうえ、建設業の許可を受けているはずであり、組合として受注した案件について組合として責任ある管理、監督のもとに施工する場合には一括下請負には該当しないと考えられる。
    4. したがって、組合としては、
      (1)組合として責任ある管理、監督のもとに施工するか、(この場合には、一括下請負には該当しないと考えられる。)
      (2)しからざる場合においては、一括下請負に該当するため、書面により発注者の承諾を得て施工するか(建設業法第22条第3項参照)
      いずれかによることが必要である。
  2. (2)測量業について
    測量業における組合の共同受注についても、同省測量業課(当時)と協議した結果、測量法に基づき登録を受けた組合が責任ある管理、監督のもとに施工する共同受注については、建設業の解釈と同様に「一括下請負」には該当しないものと考えられる。
  3. (3)以上のとおり、いずれの場合にせよ発注者としては、当該組合の具体的内容、信頼性等について不明な場合、「一括下請負禁止」をもち出していることも考えられ、上記(1)の4を踏まえつつ、各組合において発注者と協議されたい。

14 公平奉仕の原則の適用について
一部の組合員のみに利用される組合事業を実施することは、いわゆる公平奉仕の原則に反するか。
従来、以下のような場合には、いわゆる公平奉仕の原則(中協法第5条第2項、中団法第7条第2項)に反しないものとされてきたが、さらに個々の組合事業それぞれにおいて、すべての組合員に対して奉仕することまでを求める趣旨ではなく、組合がすべての組合員を対象とした共同事業を適切に実施している場合においては、組合が一部の組合員を対象とした他の共同事業を行っても、その他の組合員を対象にした共同事業が別途行われる計画、仕組みとなっている場合には、公平奉仕の原則に反しないこととされている。
  1. ① 組合事業が現実に一部の組合員についてのみ利用されるのであっても、組合事業の利用の機会が公平に与えられるようになっている場合
  2. ② 組合事業の利用の機会が過渡的に一部の組合員についてのみ与えられているにすぎないとしても、将来的に他の組合員にも利用の機会が与えられる計画、仕組みとなっている場合
  3. ③ 組合員の事業が有機的に連携している組合において、資材購入や研究開発等の組合事業が一部の組合員についてのみ利用される場合においても、その効果が組合員事業の連携等を通じ究極的に他の組合員にも及ぶことが明らかである場合

15 金融事業について
中協法による協同組合(以下「組合」という。)が、「組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む。)」の事業を行うために、必要な資金を組合が増資する名目で一定の額(1口1万円)に達するまで日掛又は月掛の方法により預り金として受け入れて(受入勘定科目「増資引当預り金」、預り期間1年、支払金利は定期積金方式に準ずる)調達すること、又は組合員から借受証券により借り入れて(支払金利についての約定はしていないが年6%を予定している)調達することは組合員よりの消費貸借と理解されるので、中協法第9条の2第1項第2号に規定している「……及び組合員のためにするその借入」に違反するものではないと解してよいか。
組合が「組合員に対する事業資金の貸付(手形の割引を含む)」の事業を行うために必要な資金を、増資の名目で受け入れ、出資金として貸し付けることは貸付金が回収不可能となった場合等において増資をするために預り入れている組合員に不測の迷惑を及ぼすおそれがあり、ひいては増資の目的を達成し得ないこととなるので適当でない。
しかし単に増資するまで経理を区分して日掛又は月掛の方法により組合が受け入れることは差し支えないが、これに対し組合員に金利を支払うことは預金の受入れとなると解する。
法第9条の2第1項第2号の規定の趣旨は、組合員に対する事業資金の貸付事業と組合員に貸し付けるための事業資金の借入れを認めているのであり、組合がその行う共同加工施設の設置等の共同事業のために資金を借り入れる場合は本号に規定する資金の借入れには該当せず、その附帯事業として当然認容されるものであり、本号はあくまでも組合員の事業資金の貸付のために必要な資金の借入事業を認めているのである。
また、その借入先を特定しているものではなく、その必要な資金を銀行その他の金融機関に限らず、組合員からも借り入れることは差し支えないが、広く組合員から反復継続して借り入れることによって実質的に預金の受入れになることまでも認められるものではない。

16 異業種組合の共同事業について
異業種で組織化し、主として教育情報提供事業と資金の貸付事業を行うことを計画しているものがあるが、このような組合でも設立が可能か。
異業種組合は、異業種中小企業が協同してその相乗効果を発揮しようとするものであり、実施する事業も、共同製品開発、共同技術開発、教育及び情報の提供等のいわゆるソフトな事業が中心となることが見込まれ、組合員が共通に利用し得る事業として資金の貸付が活用されることが見込まれる。このことから、異業種組合の組合事業については、個々の組合の実情に応じた組合事業が行われるよう特に配慮する必要があり、例えば、教育及び情報の提供事業が中心的組合事業である場合であっても、これが効果的に実施されることが見込まれるときは設立は不認可とすることは適当でないとしている。(58.8.27中小企業庁指導部長通達)。また、従来は、資金の貸付事業を行うに当たってはできるだけ「他の共同事業」と併せ行うのが適当であるとし、共同経済事業を行うことの指導が行われていたところであるが、上記通達により、「他の共同事業」には「教育及び情報の提供事業」等のソフトな事業が含まれると解されている。
以上のことから、設問の場合の組合の設立は可能であるが、これらの事業は、組合が主体的かつ積極的に取り組まなければ円滑な実施が困難となり、組合自体が休眠化する可能性及び公平性を欠く可能性も有しているので、設立後の運営指導の充実強化に努めることが必要である。

17 員外利用の制限の内容について
次のような場合、組合の共同事業や施設を組合員以外の者が利用することとなるが、員外利用に該当するか。
  1. 組合が組合員のために共同受発注・配送・決済等の事業をコンピュータ・オンラインシステムを利用して行う場合において、組合員の取引先等が当該システムを利用すること
  2. 商店街等商業集積を形成する組合が、顧客吸引力の増大のために、例えば、アーケード、駐車場、物品預り所、休憩所、公園、公衆便所、コミュニティホール、展示場、研修室、カルチャー教室等の一般公衆の利便を図るための施設を設置してこれをその利用に供すること
員外者が組合事業に関与する場合であっても、組合員のための員外者からの物品購入事業における場合のように、その関与が組合員の利用と競合せず、むしろ組合員への奉仕という組合の本来の目的の達成に必要であるときには、員外利用に該当しないと考えられる。
なお、組合事業は営利を目的として運営されることのないよう留意されたい。
  1. 組合が組合員のために外部との取引又はその仲立ちを行う場合における、取引の相手方等の当該組合事業への関与であり、員外利用に該当しない。
  2. 組合が、組合員の事業を支援するために行う、組合員の取引先、顧客等に対する施設、サービス等の提供であり、員外利用に該当しない。

18 員外利用について
問1 次のような場合は、員外利用に該当するか。
  1. 例1 組合員の取り扱う物品の共同販売事業を実施する組合が、組合員の取扱っていない物品を員外者から仕入れ、組合で販売する(例えば、弁当の共同販売を実施する組合が、日本茶、みそ汁等を仕入れ、販売する。)。
  2. 例2 中古自動車販売業者で組織する組合等で行う競売(オークション)事業に員外者が参加し、組合員に販売又は、組合員から購入する。
問2 組合が他の組合と共同して事業を行う次のような場合は、員外利用に該当するか。
  1. 例1 複数の商店街組合が、共同して連合大売り出しを実施する。
  2. 例2 複数の商店街組合が、共同商品券を発行する。
答1 員外利用は、組合事業の一部を組合員の利用と競合する態様で員外者に利用させる場合に発生する概念であり、員外者が組合事業に関与していても、組合が購入する物品の仕入先、組合が販売する物品の販売先など組合員の利用と本来的に競合しない態様での関与であれば、員外利用の概念が生じないと考えられ、設例のような場合はこれに該当すると考えられる。
 2 組合が他の組合と共同して事業を行う場合については、当該共同事業が各組合の組合事業として適切な内容の共同事業であれば、各組合員にとって当該共同事業の利用は自己の組合事業を利用しているにすぎず、員外利用の概念が生じないと考えられ、設例のような場合はこれに該当すると考えられる。なお、以下の事例については、原則として員外利用規制に違反しないと考えられる。
  1. 組合員の利用と競合しない態様での非組合員の関与
    1. ① 共同販売事業を実施する組合が、品揃えの充実のために非組合員の生産物品も販売する。
    2. ② 新幹線の駅に共同売店を出展しているが、品揃えのために員外者の取り扱い物品も販売する。
    3. ③ 地域の商工業者、サービス業者等により構成されている組合が、情報ネットワークを提供し、このネットワークに非組合員の情報もインプットする。
    4. ④ 中古自動車販売業の組合で行うオークション事業に、非組合員(有資格中小企業者、大企業、他の同業種組合の組合員等)が参加し、組合員に販売する。
  2. 組合等の共同事業
    1. ① 複数の商店街組合が連合大売り出しを実施する。
    2. ② 近隣の組合が共同して会館を設置する。
    3. ③ 複数の玩具の小売店組合が連携し、玩具の共同購入を実施する。
    4. ④ 複数の商店街組合が、共同して共通商品券を発行する。
    5. ⑤ 複数の商店街組合が連携し、それぞれが発行する商品券の相互利用を認める。
    6. ⑥ 複数のクレジットカードの組合が連携し、相互にカードの取扱いを認める。
    また、以下の事例については、員外利用規制に違反するおそれがあると考えられる。
    1. ① クレジットカード事業を実施している組合が、非出資者の利用を員内利用として計算する。
    2. ② 共同店舗事業を実施している組合が、大企業に店舗の大半を賃貸する。
    3. ③ 建設資材の共同購買事業において、組合員の必要量を大幅に超えて大量に購入し、非組合員に販売する。
    4. ④ 仕出し弁当事業を実施している組合が、非組合員からも積極的に注文を受けて弁当を供給する。
    5. ⑤ 組合員従業者宿舎に空き家が大幅に生じたため、一般者に対し賃貸する。

19 員外利用の特例について
組合員37人で設立された卸商業団地の組合において、流通の合理化等の影響で、9組合員が倒産、脱退したため、組合は経営難に陥っている。
組合では、遊休化している元組合員施設及び共同施設(共同荷捌所、共同駐車場、食堂、多目的ホール等)を員外利用に供し、その賃貸料、利用料収入をもって、組合の経営再建を図ることを希望している。
この場合、通常の員外利用比率の100分の20を超えることはできないか。
中協法第9条の2の3(組合員以外の者の事業の利用の特例)が新設され(平成9年)、次の条件を満たせば、行政庁の認可を得て100分の200を超えない範囲内で、組合事業を員外者に利用させることが可能となったため、設例の場合は100分の200までの範囲内で員外者に組合事業を利用させることができる。
  1. ① 組合所有施設を用いて行っている事業であること
  2. ② 組合員の脱退その他のやむを得ない事由により、当該事業の組合員の利用が減少していること
  3. ③ 当該事業の運営に著しい支障が生じていること
  4. ④ 当該事業の運営の適正化を図るため、組合員以外の者に、中協法第9条の2第3項但書きの限度を超えて当該事業を利用させることが必要かつ適切であること
  5. ⑤ 当該事業の運営の適正化のために必要な期間に限られること

20 員外利用について定款に規定すべきか
協同組合では、員外者に組合の事業を一定の要件のもとに利用させることができるが、定款に員外利用についての定めをしておくべきか。
員外利用について、中協法第9条の2第3項の規定は、定款に規定することを必要としていない。すなわち条文中に「定款に定めるところにより」の規定をおいていない。したがって、定款に当該規定を設定しなくとも利用させることは可能である。また、必ずしも禁止規定を定款に置かなくとも利用させないこともできる。このことは、員外利用の可否は「組合員の利用に、支障がない場合」にのみ限られているものであって、利用させるかどうかは、組合内部の契約であり、かつ員外者が組合の施設を利用することは、当然の「権利」として認められている性格のものでないこと等からも理解できるであろう。
なお、員外利用の可否を規定することが、後日の紛糾を避ける意味を持つならば、定款に規定する措置も必要かと思われる。

| I通則 | II事業 | III組合員 | IV設立 | V管理 | VI解散・清算・登記・その他 | VII協業組合 |