組合の事業

3. 事業の運営

事業の運営方法は、事業の種類や内容によって異なる部分もありますが、事業運営に共通する基本的な留意点としては、次のようなものがあります。

■ 綿密な事業計画をたてる
どのような事業であっても、計画がずさんで行き当りばったりの運営を行っていては旨く行きません。
事業計画は、事業の種類や内容によって必要とされる精密度なども異なってきますが、最低要求されるのは、先ず借り物でない自分の計画を作ることです。そして、事業毎に計画を作り、計画には、事業遂行の裏付けとなる適正な資金計画が必要です。なお、この事業計画は、組合員の利害に結びつく手数料・販売価格や賦課金などを決定する主要な資料となるものですから、その意味でも適切な事業計画が必要なわけです。

共同経済事業を行う場合、あるいは企業組合、協業組合の場合は、一般企業と同様の経済活動を行うものですから、更に綿密・周到な計画が必要です。組合員の事業利用予測、取引先である第三者の需要予測、前年度の事業実績とその経営分析などに基づいた事業計画を策定するとともに、併せて資金調達・運用、収益予測に関する財務計画を策定します。そして、組合および組合員が、その資金負担に耐えられるかどうかを検討し、予算統制に結びつけて計画をたてる必要があります。

なお、企業組合、協業組合の設立の場合や、工場団地等の集団化、店舗の共同化のように、事業を統合したり、事業所を移転するというような場合は、将来の見通しという点で、長期的かつ充分な計画が必要であり、先進地視察や取引先、金融機関あるいは家族などの理解を得るために、準備や計画作成にかなりの日数を要します。
■ 実施体制を確立する
組合は、組合員あるいは役員においても自己の事業があるため、組合運営に専念することが難しく、日常の業務は事務局にまかされることになります。また、組合員あるいは役員でさえも、組合を二次的に考えますから、組合運営がなおざりにされがちであり、そのため事務局も整備されない事態になりがちです。また、協業組合や企業組合のように、組合員が組合の事業に従事し、組合に専念できる場合においても、“一国一城の主”的感覚もあって、“船頭多くして舟山に登る”のたとえのように、衆議一致せず、事業が円滑に進まないといったことも少なくありません。

このように、組合の事業実施体制は、ともすると不充分になりがちですが、組合といえども一個の事業体ですから、その事業の内容に応じた実施体制を整える必要があります。

実施体制を確立するには、先ず、人材を確保する必要があります。先ず理事長ですが、成功している組合をみると、リーダーに人を得ている場合が多いわけです。組合という多様な人の集まる組織を統御することのできる理事長が望まれます。また、組合の業務執行を決定する一般の理事者についてもすぐれた人格手腕の持主を選ぶべきですが、先ず述べたように理事者が業務に専念できない事情もありますので、必要によっては員外の役員を置くべきです。

次に、実際の日常業務を行う事務局ですが、一般に弱体ですので、人材を確保できるよう賃金などの労働条件の改善が特に望まれます。

そして、このような人材を、適材適所主義により配置し、責任の所在を明確にする体制をとるとともに、担当者には相応の権限を与え、機敏に活動できるようにする必要があります。

なお、組合には、理事者以外に、組合員という経営の専門家がいるわけですから、組合員の知識や知恵を組合の事業運営に引き出すような体制(例:委員会を設け、組合員を委員とするなど。)をとることも有効な方法です。また、このようなことが、組合員の協力度を高めることにもなります。
■ 運営の要領を制度化する
事業の運営に関しては、組合の根拠法や定款にも定められていますが、これらの定めは基本的な事項についてのみ規定していますので、事業を実施する場合にそれだけでは不充分です。例えば、問題が生じたときその処理に手間どったり、責任の所在が不明確になったり、事業の処理が不統一になるなど、円滑な事業運営が行えません。

そこで、法律・定款に定められていない細部の事項について、事業運営の組織、事業毎の運営要領、組合員の事業利用手続などに関する定めを、規約などによって策定することが望まれます。
■ 組合員への利用公平サービスを心がける
組合は、組合員のためにのみ事業を行い、組合員が組合事業を利用することによって成り立つという基本的な仕組みを認識し、すべての事業運営に当り、組合員に対するサービス精神を忘れないようにすべきです。

また、組合は、力の大小に拘わらず、すべて平等が原則(協業組合は例外)になっていますので、組合員の事業利用について差別してはならず、機会均等になるよう努めねばなりません。このことは法律で定められているからというだけでなく、差別することによって結束が乱れ、事業が円滑に進まなくなるからです。

なお、商工組合の指導調査事業のように員外者も対象になるような場合は、上記と異なってきますが、それは業界全体のためというように置きかえて考えるべきでしょう。また、協業組合や企業組合は、組合の事業の発展のみを考えれば良い組織になっていますが、この場合は、利益の配分や事業への従事に対する報酬という点で、組合員へのサービス等を考慮することになります。

なお、組合は、本来組合員のための組合であり、組合員でないものに事業を利用させるべきではありませんが、組合の施設に余裕がある場合はこれを使わないと無駄になりますので、施設の有効利用という観点から、20パーセントを限度に員外者に事業を利用させることができます。また、員外者には、組合員と区別して高い価格で利用させても差支えありませんが、員外利用はあくまで組合員の利用に支障がない場合に限り認められるものですから、員外利用を予定して事業を行うようなことは慎むべきであり、また、組合員の利用を断ってまで員外者に利用させるようなことは許されません。
■ 組合員の協力参加意識を高める
組合は、組合員の事業利用により成り立つものであり、組合員の協力が得られなければ組合員は失敗に終ります。組合員のなかには組合への代金決済を一番後回しにするとか、有利な場合にのみ組合事業を利用するなどの例も少なくありません。組合といえども、見込違いによって、あるいは創業時などには、一般市場より不利な条件で組合員に利用させなければならない場合もあるわけで、そのような時こそ組合員の協力がより必要なことになります。

このように、組合運営において組合員の協力は、不可欠の要件ですので、協力を得る努力が極めて必要です。

組合員の協力を得るためには、勿論組合事業が魅力のあるものでなければなりませんが、それと同時に、組合の性格や事業等について理解して貰い、組合員であるという意識を組合員に植え付ける必要があります。その方法としては、あらゆる会合や組合員への連絡を通して、組合員を教育し、事業活動等の内容を周知させることです。また、事業や問題別に委員会など作り、組合員を委員として組合運営に参加させることも有効な方法です。また、リクリエーションや慶弔見舞などの福利厚生事業を実施することも、組合員の連帯感や組合との一体感を高める上で効果的です。
■ 事業体としての活動を認識する
組合といえども、組合員以外の第三者との取引においては、営利会社と同じ立場に立たされるわけですから、営利会社と同様の事業体という面をもっていることを認識して運営に当るべきです。そのためには、厳しい競争場裡に立たされていることに鑑み、対外的信用や経済変動に備え一定の資本蓄積が必要です。そのために組合員との取引においては、時価を基準として取引することも適切と思います(共同事業の利益は利用高に応じた配当によって組合員に還元できます。)。

また、市況・商品あるいは取引方法など、その事業について専門的な知識も必要とされますので、そのような知識をもっている人材を置くことも必要になります。