組合の事業

1. 事業の種類
組合は、中小企業問題を解決するにふさわしい組合が各種用意されておりますが、組合の事業も中小企業の解決すべき問題の多いのに応じていろいろな事業があります。そして、組合の種類によって、それぞれ行える事業が定められています。

組合別の事業の概要は、次のとおりですが、組合の事業は必ずしも定型化されたものばかりでなく、最近では時代の変化に対応し組合の事業も多様化しております。

■ 事業協同組合および事業協同小組合の事業
  • 共同生産加工事業 この事業は、組合が、新鋭設備等を導入した生産・加工施設を持って、組合員の委託等によって生産・加工する事業です。これによって、原価の引下げ、規格の統一、品質の向上、設備の効率化などの効果があげられます。したがって、本事業は、このような原価の引下げなどの効果が期待でき、かつ、原価の引下げなどが必要とされている場合に行う事業です。
    なお、本事業には、組合員の副産物(製材業のノコギリ屑など)の製品化のための共同生産や、組合員の工具等の共同修理などもあります。
  • 共同購入事業 組合員の事業上の必要物資を、取纏め購入し、組合員に提供する事業です。これによって、入手価格の引下げ、代金決済条件など取引条件の改善、規格・品質の均一化などの効果があげられるほか、原材料等が入手困難な場合には入手し易くなります。
    本事業の取扱品は、主要原材料、商品などのほか、安全用具、加工油、包装紙、事務用品など副資材・消耗品などにも及んでおり、本事業は多くの組合において広く実施されています。
    実施方法は、組合員の需要を見込んで行う見込購入、組合からの注文によって購入する委託購入の方法のほか、取引先・取引条件を定め物資を斡旋する方法、あるいは、市場や市立てによって組合員の取引の利便を図る方法などもあります。なお、購入品を組合員の使い易いように加工を加えて(例えば、鉄鋼の購入について、折り、曲げ、切断などの加工を加える等)組合員に提供している場合もあります。
  • 共同販売事業 組合員の生産品等を取纏め販売する事業ですが、これによって、価格・決済条件などが有利になるほか、大口需要先の開拓など販路の拡張が図れます。また、乱売防止にも効果があるほか、現金化が長期化する場合においては組合での資金手当により、組合員の資金ぐりの緩和が図れます。
    実施方法は、共同購入事業の場合と同様、買取販売、委託販売、販売の斡旋等の方法のほか、市場の設置や市立てあるいは展示会の開催等によって組合員の販売に利便を図る方法もあります。
    なお、組合員の生産品等をそのまま販売しないで、それに加工を加え、付加価値の高いものにして販売している例もあります。
  • 共同受注事業 組合が注文を受け、組合員に下請などをさせ組合が納品する事業ですが、組合員に受注を斡旋する方法もあります。これによって、大口受注先の開拓など販路の拡張や取引条件の改善が図れます。また、本事業は、組合員事業の有機的結合あるいは組合における組立作業の実施などを加えることによって、単一加工品の受注から部品受注へ、更には完成品受注へと付加価値の高いものを受注する途が開けるなどの効果もあります。
    なお、国や都道府県、公社、公団等の官公需受注を受ける場合は、官公需受注について適格性を有する組合は通商産業局の証明が受けられる「適格組合制度」が設けられています。
  • 共同保管事業 倉庫等を設け組合員の在庫品などを保管する事業ですが、保管経費の引下げ、製品の保全、施設難の解消等が図れるほか、下請業種などの場合は製品の納期の遵守にも役立ちます。特に、本事業は、腐敗・変質のおそれのあるもの、危険性のあるもので、保管に特別の技術・設備を要する場合などに効果的です。
    なお、組合員の寄託物については、倉荷証券の発行が認められます。
  • 共同運搬事業 組合員の商品等の運搬を共同で行う事業ですが、組合が運搬車両を保有して行うほか、特定の運送会社に委託する方法などもあります。
    この事業は、運搬経費の引下げ、運搬物の保全をねらいとしていますが、貨物量が多く、運搬に特別の注意が必要とされ、または運搬距離が長い場合などに行います。
    なお、前項の共同保管事業と関連させて行うことも、効果的な場合があります。
  • 共同検査事業 組合員の製品、設備、原材料などを検査する事業ですが、これにより、品質の維持・改善、規格の統一・製品の声価の高揚などが図れます。
    検査の方法は、組合が直接検査するほか、公設試験研究機関に委託する方法もあります。
    なお、検査に合格したものには、製品等に組合名で合格を証する証紙などを貼付させる例が一般的です。
  • 共同試験研究事業 組合員の事実上の一定の課題について試験研究を行い、組合員の製品・技術・意匠などの改良・改善・開発等を行います。
    実施方法は、組合が試験研究施設を設置するなどして自ら行う方法と、公設試験研究機関に委託する方法とがありますが、外部の試験研究機関等の協力を得て行う方法が一般的に賢明な方法です。
  • 販売促進事業 共同販売事業など多くの事業が販売促進に役立ちますが、販売促進を直接の目的とする事業としては、次のような事業があります。いずれも、中小企業者個々では、採算が合わないとか、品揃えができないなどの理由で実施し難く、実施しても効果があまり期待できませんが、共同によってこれを可能とする事業です。
  • 共同宣伝・広告
  • 見本市・展示会の開催
  • 市場の調査
  • 共同マークの制定
  • 共同売出し(大売出し、特売日の設定、チケット・商品券・スタンプの発行など)
  • 環境整備(アーケード、街路灯、駐車場、物品預り所の設置、歩道の整備など)

  • 共同利用設備提供事業 機械・工具、試験設備、運搬設備、会議室等を設置し、これらの施設を組合員に利用させる事業ですが、組合員に貸与する方法と、組合に来て利用して貰う方法とがあります。これによって、新鋭機械など組合員の導入困難な施設等の利用が可能となるとともに、経費の節減が図れます。
  • 資金の貸付・債務の保証事業 本事業は、組合員の事業資金の確保を目的として、通常、金融機関より資金を借入れ、これを組合員に転貸する方法をとりますが、金融機関や政府資金等を斡旋する方法もあります。
    貸付の形態は、手形貸付・保証貸付・手形の割引などとなっています。
    なお、金融事業に関しては、組合と組合員のための金融機関として、商工組合中央金庫が設置されていますので、これを利用することができます。
    債務の保証事業は、組合員の金融機関に対する債務の保証を行い、資金を借り易くするものですが、金融機関に対する債務の保証に限られています。
  • 共同労務管理事業 組合員の従業員の確保・定着あるいは能力の向上を図るため、組合員の労務管理の一部を共同で行う事業ですが、次のように各種のものがあります。
  • 従業員の確保関係では、集団求人、労働条件の改善(賃金・労働時間・休日の協定など)、安全・衛生面の改善(安全衛生知識の普及、安全用具の共同購入、安全衛生パトロールなど)、福利厚生面の向上(共同宿舎・持家、共同給食、共同保養施設、共同文化・体育・教養施設、生命・傷害等に対する共済、生活資金貸付など)。
  • 従業員の能力向上面では、技能等についての教育・訓練。
  • その他、労働保険の事務代行(労働保険事務組合になれる。)など労務事務の簡素化に役立つ事業があるほか、組合員に対する労働関係知識の修得のための、教育や情報の提供も大切な事業となっています。

  • 福利厚生事業 主として組合員の私生活面の利益を増進するための事業ですが、慶弔金の給付、健康診断、生活用品の共同購入、文化、体育などのリクリエーション活動その他があります。
    なお、本事業は、組合員の融和、組合参加意識・協調性の高揚等に効果のある事業でもあります。
  • 教育情報事業 組合員の経営、技術の改善向上を図るために、教育と情報の提供を行う事業ですが、経営管理の手法等に限らず、市場、経済情勢、業界の動き、法律の規制その他企業経営に関する一切のものが対象になります。
    実施方法は、講習会、研究会、企業視察、機関紙・文書等による方法のほか、診断、経営分析などによる方法もありますが、勿論、これらの事業を実施するための資料の収集・分析・調査研究も本事業に含まれます。なお、本事業は、軽微なものから高度なものまで多様な形で行われていますが、広く実施されている事業の一つです。
    また、組合や組合事業について、組合員を教育することや知識を与える活動も、本事業によって行います。
  • 協定事業 過当競争の防止・取引秩序の改善などのために行いますが、価格の、代金支払方法、営業時間等の協定、生産調整、製品品質等の統一協定その他があります。しかし、価格協定や価格に影響を及ぼすような協定は、物価に与える影響もありますので、事前に関係官庁と相談するようにして下さい。
  • 団体協約の締結事業 力が弱いための取引面等における不利性を、組合が組合員の取引先等に交渉し、協約を結びこれを改善しようとする事業です。具体的には、小売と卸、卸とメーカー、下請企業と親企業等との間で、価格、代金決済方法などの取引条件について協約を締結します。そのほか、品質や規格について締結する場合や、施設や特許などの利用に関して締結する場合もあります。
    また、取引条件について協約する場合は、交渉の相手方は交渉に応じる義務が課されています。
  • 集団化事業 高度化事業として実施されている事業ですが、これには都市の過密、交通事情の悪化等による立地難の解消と工場等の適正配置・企業間の有機的結合を図ることを目的に、工場等を集団で移転し、組合としては、移転のための諸活動と移転先の管理を行うほか、各種の共同事業を行っている、工場団地、卸団地、倉庫団地、トラックターミナル団地、共同工場などがあります。また、小売業においては、百貨店等の大規模店舗と同様の効果をあげるため、共同店舗の設置があり、組合としては、店舗の設置と管理並びに大型店と同様の効果をあげるための事業を中心に各種の共同事業を行います。
  • 知識集約化・情報化福祉型経済に対応する事業 組合の事業は、これまでも時代の変化に対応するための新しい事業が生まれています。例えば、労働力不足に対応する共同労務管理事業、公害問題に対応する共同公害防止事業、都市過密等に対応する集団化事業、等々です。
    これからの中小企業に要請されているのは、知識集約化等であり組合としてもこれに対応する必要があるわけです。そのための事業は、現在、模索の段階でもありますが、いくつか芽ばえが見られます。このなかには、これまで述べてきた事業にも該当するものがあり、例えば、試験研究、教育情報などの事業ですが、具体的には次のような事業です。
    情報化、市場動向調査・情報収集、科学的経営管理、デザイン・商品開発、人材養成、異業種の連携、新事業分野への進出等についての共同事業です。また、省資源、省エネルギーのための廃棄物の共同再生利用・共同ボイラー、企業の社会的責任等に対応する公害防止の共同化、あるいは社会的責任に関する啓蒙等です。
  • その他の事業 これまでに述べた事業は、現在行われている事業のうち、主な事業とその概要を紹介したものですが、事業協同組合等は組合員の事業に関する共同事業であるならば殆ど全部実施できますので、以上述べた以外の事業も必要に応じ実施することができます。

■ 事業協同組合連合会の事業
事業協同組合の項で述べた事業は、連合会でもすべて実施できます。連合会の事業は、単位の協同組合が単独で行う場合より連合して行った方がより大きな効果が期待できる場合に行うとともに、会員である単位組合の指導や連絡を行います。
なお、連合会の事業は、会員である単位組合のみでなく、会員の組合員まで対象にして実施することができます。

■ 企業組合の事業
企業組合の事業は、事業協同組合などのように、組合の事業によって組合員の事業を補完するというのではなく、組合員が組合の事業に没入し、組合自体が独立した事業主体となって、商業・工業・サービス業などを行います。また、その行える事業については何ら制限がありませんから、組合員が従来営んでいた事業以外の事業も行えます。しかし、従来営んでいた事業を廃止し、企業組合によって新しい事業に転換した例もありますが、勤労者等で組織する場合を除き、従来営んでいた事業を行う例が一般的です。
なお、前述したように企業組合は、小零細事業者等が組合を作って共に働く場を得るという目的があり、組合員に組合事業に従事する義務が課され、従業員の3分の1以上は組合員でなければならないことになっていますので、事業の実施等に当たってはこのことに留意する必要があります。

■ 商工組合の事業
商工組合は、業界を網羅する組合ですから、業界全体の立場から実施する事業が主なものとなっております。

  • 指導調査事業 業界全体の改善発達を図るための事業の一つで、必ず実施するよう指導されています。この事業には、
    1. 指導・教育
    2. 情報の収集・提供
    3. 調査研究の三つの事業があります。
    この事業の大きな目的は、業界のあり方、将来の方向について目標を定め、その目標を達成するための方策を示し業界を導くことです。そのための具体的内容は、経営、技術、市場、需給見通しなどについて調査研究や諸資料の収集・分析、業界改善発達策の研究・検討等を行い、その結果等に基づいて、講習会、研究会、標準方法の普及、巡回指導、企業視察、機関紙、図書、文書その他によって、組合員等を指導し教育することを内容としています。
    また、組合は業界を代表する立場から、国等への建議、関係団体等との連絡・折衝等を行います。
  • 組合協約・特殊契約締結事業 組合協約は、同業の員外者や取引先等の間に、調整事業や取引条件などについて協約を締結する事業です。取引先との力関係等から協約締結の例は少ない状況ですが、商工組合は、業界を代表する組合として、取引条件の改善等のための交渉や話し合いなどの活動が必要であり、本事業はそのための事業でもあります。
    特殊契約は、大企業が、中小企業分野に進出または事業拡大をすることによって、中小企業の経営が著しく不安定になるおそれがある場合に、その進出や事業拡大を停止または計画の縮小をしてもらう事業です。
    なお、組合協約のうち調整事業に係る協約と、特殊契約は、所管行政庁の認可が要件となっています。
  • 共同経済事業 事業協同組合と同じような、共同生産、販売、購買、保管、運搬、検査等の共同事業と、資金の貸付、福利厚生事業が行えます。しかし、この事業は、出資制の商工組合でないと実施できません。
    なお、商工組合は一般に地区が広いため、共同経済事業の実施上不利な面があり、本事業の実施は、特定の業種または特殊な事業に限られる傾向がありますが、成功している例もあります。

■ 協業組合の事業
協業組合は、組合員の事業を統合する組合ですから、その事業は、統合した事業とそれに関連する事業に限られています。

  • 協業対象事業 協業とは、組合員が営んでいた事業を協同経営することとされ、その協業の対象となる事業という意味で法律上協業対象事業といっていますが、一般にはこれを略して協業事業といっています。
    協業事業には、組合員の事業の全部を統合する全部協業と、組合員の事業の一部を統合する一部協業とがあります。
    全部協業は、同業者で行うのが普通ですが、異業種の協業も可能です(例:部品加工業と完成品メーカーによる一貫生産、異業種の小売店による百貨店の形成など)。
    一部協業は、組合員の取扱品の一部を協業する場合のほか、事業工程の一部(生産・加工工程の一部、原材料等の仕入→生産→販売の工程の一部など)の協業も可能です。
    また、協業は、組合員の事業本体を統合するものでありますから、宣伝・広告、資金調達、試験研究、汚水処理など事業に附帯するような部分についての協業は、事業として認められません。
  • 関連事業 協業事業に関連して実施する事業で、例えば、部品製造業者で作った組合が完成品を仕上げる場合の完成品の組立てが関連事業になります。その他、協業事業の原材料の内製化や協業事業によって生じた副産物を製品化する事業などが該当します。
  • 事業の転換 協業組合が営んでいた事業を協業することを前提としていますが、経済情勢の変化によって事業が斜陽化して来たというような場合は、行政庁の認可を受けて、他の事業に転換できます。
    なお、事業の転換は、設立後しか認められませんので、当初から事業の転換を目的とする協業組合の設立はできません。

■ 商店街振興組合の事業
この組合の事業は、次のように事業協同組合でも行える事業ですが、この組合は、制度的に商店街全体を網羅する組合ですから、事業実施に当り商店街全体の発展を主眼とするよう要請されていると言えます。

  • 環境整備事業 アーケード、街路灯、駐車場、物品預り所、休憩所等の設置、あるいは商店街全体の改造など、ショッピング地域として組合員のみならず一般公衆の利便をも図るために、商店街を設備する事業です。
  • 共同経済事業その他 事業協同組合と同様に、組合員の事業の近代化・合理化を図るための共同事業が実施できます。特に、本組合では、休日・開閉店時間の指導など商店街全体の秩序や調和を図ったり、あるいは共同売出しなど統一的な行動を要する事業の実施が可能です。

■ 生活衛生同業組合の事業
この組合は、生活衛生関係業界における衛生水準の向上等を図る目的で設けられた組合ですので、衛生水準の維持・向上を図るための協定や指導等を中心に、その他、近代化・合理化のための共同事業などを行います。その事業には、
  • 適正化事業(協定・制限事業)
  • 店舗の配置基準の制定
  • 指導・検査事業
  • 共同経済事業
  • 団体協約・特殊契約締結事業があります。

なお、この組合の事業は、本組合と同様に業界を網羅する組合である商工組合の事業と類似しております。